奄美市立奄美博物館で常設展示している奄美相撲の展示解説「奄美大島の相撲(歴史と文化)」を紹介させていただきましたが、大相撲の「立ち会い相撲」とは異なる「組み相撲」がどのようなものなのか、かつて奄美でも盛んに行われていた「組み相撲」を理解するために、沖縄相撲の実際を見てみましょう。
沖縄では、相撲を方言で「シマ」と呼びます。集落は、奄美と同様、方言で「シマ」と呼びます。だから集落相撲のことは、「シマジマ」と呼ばれます。
沖縄角力協会の方が運営されているHP「ようこそ沖縄角力のホ-ムペ-ジへ」から沖縄角力の紹介を参考に、ルールをまとめておきます。
土俵:直径7mの円または四角の中に、砂かオガクズをまいて土俵を作ります。
厳密に言えば、「砂俵」ということになります。
力士:重量級(80kgを超えるもの)、軽量級(80kg以下)の2階級に分かれています。
服装は、角力着(柔道着)を着て、紅白の帯(4m)と鉢巻きを締めます。
立ち会い:大相撲のような立ち会いはありません。定められた帯の締め方とつかみ方で、
最初から右四つに組んで勝負を始めるのが特徴です。
技:引き技・投げ技・掛け技などの型が定められています。
勝負:技をかけて、相手の背中(両肩)を地面につけたら勝ちとなります。
土俵外に出たり、手などが地面についたり、横倒しになった場合でも、
負けにはなりません。試合時間は5分間で、3本勝負を行い、2本勝てば勝者となります。
禁止:試合の途中で手をはずして相手の逆手を取ったり、襟をつかんだり、
足を取って倒したり、顔面を叩くことなどは禁止されています。
1949(昭和24)年に刊行された昇 曙夢『大奄美史』に「奄美諸島年中行事」が附録としてまとめられています。奄美相撲の調査研究をされている津波高志氏(琉球大学名誉教授)が、「八月」のところに記載されている[相撲]の項目について指摘されているので(津波2012・2014)、『大奄美史』の[相撲]の部分を引用しておきます。
「大島の相撲には琉球風と内地風の二種」あると認識されていたことがわかります。
「[相 撲]八月節句には他の節句と同じく、競舟、綱曳、手踊等いろいろな催し物が行はれるが、最も特色的なものは豊年相撲と八月踊りである。大島の相撲には琉球風と内地風の二種あつて、琉球風は専ら徳之島、沖永良部島、与論島に行はれ、大島本島や加計呂麻島では専ら内地風の相撲が行はれる。琉球風の相撲は相手を倒したばかりではまだ勝負がつかず、相手を仰向にしてその背部をしつかり地面に着けて了はなければ勝にならないのである。内地風の相撲は全く内地と同じく、部落の広場に土俵を設け、四本柱を立て、行司がついて本式に行はれる。観客は周囲のアシャゲ(本文参照、氏神社)に陣取り、又は新設の棧敷に坐して、弁当を開き、酒を汲み交わしながら見物する。力士は東西に分れ、部落民も雙方に分れて各々一方を声援し、熱烈な競技が演ぜられる。
相撲の終り頃中入れといつて、酒甕二つ、甕二籠、その他菓子・蜜柑などを頭に載せ、皷を先頭に踊子を従へて土俵の周囲をぐるりと廻つて踊ることがある。一踊り済むと、これ等をバラバラに投げて子供達に拾はせる。中入れがは入ると、闘技は益々盛んになる。」
(参考文献)
津波高志 『沖縄側から見た奄美の文化変容』、2012年、第一書房
津波高志 『現場の奄美文化論-沖縄から向かう奄美-』、2014年、おきなわ文庫