奄美市の概要

 琉球弧(南西諸島)の島嶼地域は、鹿児島県に属する薩南諸島と沖縄県に属する琉球諸島に大別されますが、奄美群島は薩南諸島に含まれています。
 奄美群島は、おおよそ北緯28度~29度のところに位置していて、喜界島・奄美大島・加計呂麻島・請島・与路島・徳之島・沖永良部島・与論島等から構成されています。奄美市は、奄美群島で最大規模を有する奄美大島に位置しています。
 2004(平成16)年2月に、奄美大島合併協議会が発足して、奄美大島7市町村の合併議論が進められてきた結果、2006(平成18)年3月20日、笠利町・名瀬市・住用村の3市町村が合併して「奄美市」が誕生しました。奄美市の人口は、2014(平成26)年12月31日時点で45,263人を数えます。奄美群島12市町村における政治経済の中核都市として発展を続けています。
 奄美市は、旧自治体の行政区域を踏襲して奄美市笠利町、奄美市名瀬、奄美市住用町の3地区に大別されています。奄美大島の北半部(龍郷町を除く)に位置する奄美市の地勢は、一様ではありません。北側から南側に目を転じながら、奄美市の地勢と集落を概観しておきます。
[奄美市笠利町]
 奄美市笠利町は、東海岸と西海岸で地勢が著しく相違しています。東海岸は台地、西海岸は低い山地が展開する対照的地形となります。そのため、東海岸では平坦地に集落が隣接して営まれていますが、西海岸では集落の三方が山地で囲まれ、集落が隣接して山地で隔てられ、集落景観も著しく相違しています。東海岸は、総じてサンゴ礁が発達しています。河川は、東海岸はほとんど小型河川ですが、西海岸は谷地を貫流する小型河川・中型河川により沖積平野の形成も認められます。東海岸は、北側から用・笠利(1区・2区・3区)・辺留・須野・崎原・土盛・宇宿・城間・万屋・和野・節田・平・土浜・用安の16集落があります。西海岸は、佐仁(1区・2区)・屋仁・川上・赤木名(外金久・中金久・里)・手花部・前肥田・打田原・喜瀬(1区・2区・3区)の13集落があります。
[奄美市名瀬]
 奄美市名瀬の地勢は、ほとんどが山地で占められていて、中型河川・大型河川の浸食による谷地平野の形成が認められます。そうした谷地平野を中心に居住空間が形成され、歴史的な行政区分をふまえながら「古見方」「上方」「下方」「市街地」の4地区に大別されています。笠利町西海岸と同様に大半の集落は、三方が山地で囲まれた集落景観を呈しています。
 「古見方地区」は、太平洋に面した奄美大島東側の地域で、小湊・名瀬勝・崎原・前勝・西仲勝・西田・伊津部勝・朝戸の8集落から成ります。「上方地区」と「下方地区」は東シナ海に面した奄美大島西側の地域で、「上方地区」は大熊・浦上・有屋・仲勝・有良・芦花部の6集落、「下方地区」は朝仁・小宿・里・福里・知名瀬・根瀬部の6集落から成ります。「市街地地区」は、東シナ海に面した名瀬湾の周辺一帯に形成されていて、もともと金久と伊津部の2集落で構成されていました。
[奄美市住用町]
 奄美市住用町の地勢は、町域のほとんどが急峻な山地で占められ、奄美大島屈指の大型河川が複数貫流しています。奄美大島の最高峰は、湯湾岳(694.4m)ですが、別表に示すように奄美大島の主要山岳の標高順位10山中、金川岳・タカバチ山・滝ノ鼻山・鳥ヶ峰・松長山・ヤクガチョボシ岳の6山は住用町に所在していて、住用町の急峻な山岳地形がうかがわれます。
 また主要河川についても、奄美大島の主要二級河川の標高順位10河川中、住用川・役勝川・川内川の3河川が住用町を貫流しています。奄美大島南部地域に広がる急峻な山地の中でも、特に標高が高い山地が集中する住用町は、夏期でも豊富な水量を維持した大型河川・中型河川が多数貫流して、非常に険しい谷地形が形成されています。
 住用町は、タカバチ山(485m)から滝ノ鼻山(482m)に至る急峻な山脈を境界として、「東城地区」と「住用地区」に区分されています。
 「東城地区」は、北側から和瀬・城・摺勝・川内・東仲間・見里の6集落から構成されています。川内川流域に形成された谷底平野は、住用町で最も広大な平地面積を誇り、摺勝・川内・東仲間・見里の4集落が営まれています。川内川の河口部分は、海岸部分に砂洲が発達して、河口閉塞による珍しい広い内海(汽水域)が形成されています。
 「住用地区」は、北側から西仲間・石原・役勝・山間・戸玉・市・青久の7集落から構成されています。住用川と役勝川の河口の合流点に形成された広大な干潟には、マングローブ群落が繁茂、国定公園に指定されています。海岸に面して営まれている集落が少ないのも特徴的で、外洋に面しているのは、和瀬・城・青久の3集落のみだけです。
 奄美市住用町は、環境省を中心に鹿児島県・沖縄県及び関係市町村で進められている世界自然遺産候補「奄美・琉球」の中核地域のひとつであり、2015年に予定されている国立公園登録、2017年以降に予定されている世界遺産登録に向けて、各種の取り組みが進められています。

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