世界遺産に登録されている「石見銀山遺跡とその文化的景観」ですが、16世紀から石見銀山で生産された銀は、高品質のため海外からも高く評価され、石見銀山が所在する佐摩村にちなんで「ソーマ銀」と呼ばれていました。特に16世紀後半から17世紀前半には、世界の産銀量の約3分の1を日本産銀が占めていて、その大半が石見銀山で生産されたものと考えられています。その銀は、琉球国を経由して、ポルトガルが東アジアの交易拠点としていたマラッカから世界市場に流通していたのです。
実は、石見銀山一帯の伝統的食文化として、「鶏飯」「げたのは」等が存在するのですが、そうした銀流通の経路と薩摩藩が関係していた歴史から理解できるのかもしれません。石見銀山の「鶏飯」「げたのは」については、私たちは、東京大学医科学研究所奄美病害動物研究施設に勤務されている服部正策先生が島根県のご出身であることから、教えていただいて初めて知りました。
要点のみがまとめられたものですが、①日本史と世界史を文化交流の視点で結びつける、②日本が「銀鉱山列島」として記載されている16世紀製作の世界地図と「鉄砲」「陶磁器」「砂糖」「ソーマ銀」等のモノの世界経済を関連づける、③教科書では取り上げられない王直(長崎を拠点に活躍した中国人倭寇)の活動を取り上げる、という興味深い高校世界史の授業概要資料があるので、ご紹介しておきます。
類似した視点から分析された論文も別途取り上げたいと思いますが、長い論文を読まれるのは大変ですから、こうした概要もご参考になされてはいかがでしょうか。
<世界史B授業実践例>屋良紋乃(沖縄県立普天間高等学校)「世界史を動かした日本史 日本史を動かした世界史-16世紀の世界をめぐる銀-」(外部リンク)
『世界史のしおり』2011年2学期号、帝国書院